10分の仕事が、8分になった。でも「待ち」は増えた。
一つの工程で、10分かかっていた作業がある。やり方を見直して、8分でできるようになった。同じ時間で、より多くつくれる。改善は成功したように見えます。ところが、早くできるようになった分だけ、次の工程の前に仕掛品がたまり始めた。次の工程が処理できる量は、変わっていなかったからです。
作業は早くなった。でも、仕事全体は早くなっていない。むしろ、「待ち」は増えてしまいました。
早くつくれるなら、たくさんつくった方がいい?
一つの工程だけを見れば、10分を8分にできたことは立派な改善です。機械も人も、効率よく働けるようになった。なら、できるだけたくさんつくった方がいい。そう考えたくなります。
でも、次の工程が処理できる量を超えてつくれば、それは工程の間にたまっていきます。たくさんつくれているのに、仕事全体は流れていない。ここで見るべきなのは、
「どれだけ速くつくれるか」ではなく、「必要な量を、どう流すか」。 ということです。
「速くつくる」から、「必要に合わせて流す」へ。
こうした「流れ」を徹底して考えてきた代表的なものの一つが、トヨタ生産方式(TPS)です。その柱の一つであるジャスト・イン・タイム(JIT)には、必要なものを、必要なときに、必要な量だけ。という考え方があります。
前工程の都合で、できるだけたくさんつくるのではない。後工程が必要とするものを、必要なときに、必要な量だけ供給する。後工程が必要なものを前工程から引き取り、前工程は引き取られた分を補充していく。こうした考え方は、「後工程引き取り」や「引っ張り方式(プル方式)」と呼ばれます。
重要なのは、単に生産量を減らすことではありません。必要以上につくらず、工程の間に余分なものをためず、仕事全体が流れるようにする。そこに、改善のもう一つの見方があります。
改善は、「速さ」だけでは測れない。
作業時間を短くする。一時間あたりの生産量を増やす。機械の稼働率を上げる。どれも大切な改善です。でも、一つの工程を速くした結果、その先に仕掛品が積み上がるのであれば、それだけで会社全体の改善とは言えません。
だから、「この作業を、もっと早くできないか。」だけではなく、「必要なものが、必要な量だけ、次の工程へ流れているか。」と考えてみる。
速くつくることから、必要に合わせて流すことへ。改善を見る視点を少し変えると、「たくさんつくれること」と「仕事がうまく流れること」は違う。 ということが見えてきます。
POINT
この記事のテーマは、「トヨタ生産方式(TPS)」につながる考え方です。
トヨタ生産方式では、個々の工程をできるだけ速く動かすことだけを目指すのではなく、ムダを減らし、必要なものが必要なタイミングで流れる仕組みを重視します。
その柱の一つがジャスト・イン・タイム(JIT)です。
さらに、後工程が必要とするものを前工程から引き取る「後工程引き取り」や、それに応じて前工程が生産するプル方式など、さまざまな仕組みが組み合わされています。これらは別々の理論というより、トヨタ生産方式という一つの体系の中で理解することで、その意味が見えてきます。
→ ECRSとは何か