仕事を早くすることが、改善なのか。

2026.08.31
改善する

10分の仕事が、8分になった。でも「待ち」は増えた。

一つの工程で、10分かかっていた作業がある。やり方を見直して、8分でできるようになった。同じ時間で、より多くつくれる。改善は成功したように見えます。ところが、早くできるようになった分だけ、次の工程の前に仕掛品がたまり始めた。次の工程が処理できる量は、変わっていなかったからです。

作業は早くなった。でも、仕事全体は早くなっていない。むしろ、「待ち」は増えてしまいました。

早くつくれるなら、たくさんつくった方がいい?

一つの工程だけを見れば、10分を8分にできたことは立派な改善です。機械も人も、効率よく働けるようになった。なら、できるだけたくさんつくった方がいい。そう考えたくなります。

でも、次の工程が処理できる量を超えてつくれば、それは工程の間にたまっていきます。たくさんつくれているのに、仕事全体は流れていない。ここで見るべきなのは、

「どれだけ速くつくれるか」ではなく、「必要な量を、どう流すか」。 ということです。

「速くつくる」から、「必要に合わせて流す」へ。

こうした「流れ」を徹底して考えてきた代表的なものの一つが、トヨタ生産方式(TPS)です。その柱の一つであるジャスト・イン・タイム(JIT)には、必要なものを、必要なときに、必要な量だけ。という考え方があります。

前工程の都合で、できるだけたくさんつくるのではない。後工程が必要とするものを、必要なときに、必要な量だけ供給する。後工程が必要なものを前工程から引き取り、前工程は引き取られた分を補充していく。こうした考え方は、「後工程引き取り」や「引っ張り方式(プル方式)」と呼ばれます。

重要なのは、単に生産量を減らすことではありません。必要以上につくらず、工程の間に余分なものをためず、仕事全体が流れるようにする。そこに、改善のもう一つの見方があります。

改善は、「速さ」だけでは測れない。

作業時間を短くする。一時間あたりの生産量を増やす。機械の稼働率を上げる。どれも大切な改善です。でも、一つの工程を速くした結果、その先に仕掛品が積み上がるのであれば、それだけで会社全体の改善とは言えません。

だから、「この作業を、もっと早くできないか。」だけではなく、「必要なものが、必要な量だけ、次の工程へ流れているか。」と考えてみる。

速くつくることから、必要に合わせて流すことへ。改善を見る視点を少し変えると、「たくさんつくれること」と「仕事がうまく流れること」は違う。 ということが見えてきます。


POINT

この記事のテーマは、「トヨタ生産方式(TPS)」につながる考え方です。

トヨタ生産方式では、個々の工程をできるだけ速く動かすことだけを目指すのではなく、ムダを減らし、必要なものが必要なタイミングで流れる仕組みを重視します。

その柱の一つがジャスト・イン・タイム(JIT)です。

さらに、後工程が必要とするものを前工程から引き取る「後工程引き取り」や、それに応じて前工程が生産するプル方式など、さまざまな仕組みが組み合わされています。これらは別々の理論というより、トヨタ生産方式という一つの体系の中で理解することで、その意味が見えてきます。

→ 「トヨタ生産方式(TPS)」とは

→ ECRSとは何か

この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

「経営の学問所」編集部では、日々の仕事や経営の中にある経験と、経営学の理論や先人たちの知をつなぐメディアとして、身近な問いから経営を考える「経営ノート」と、理論や概念をもう一歩深く学ぶ「一杯の経営学」を通して、経営を見るためのさまざまな視点をお届けします。

新たな学びを探す

目次