みんな忙しい。それなのに、仕事が進まない。
次から次へと仕事が入ってくる。会議や打ち合わせの予定も埋まっている。みんな、手を止める暇もなく働いている。
「最近、本当に忙しいですね。」
そんな言葉が、会社のあちこちから聞こえてくる。忙しいということは、それだけたくさん仕事をしているということです。では、忙しい会社は、生産性が高い会社なのでしょうか。
そもそも、「生産性が高い」とは何だろう。
一人の社員が、1日に処理できる仕事が10件から15件になった。一つの工程で、1時間につくれる製品が100個から120個になった。同じ時間で、より多くの仕事ができるようになった。確かに、生産性は上がっています。
でも、その先で仕事が止まっていたらどうでしょう。
担当者が書類をどんどん作っても、上司の承認待ちで積み上がっている。営業が次々に案件を取ってきても、設計部門で処理しきれない。前工程が120個つくっても、次の工程では100個しか処理できない。一部分だけを見れば、効率は上がっています。
でも、会社全体の仕事はそれほど進んでいない。
どこを見るかによって、「生産性が高い」の意味は変わります。
全員を効率化すれば、全体も効率化するのか。
会社には、いろいろな仕事があります。それぞれの部署が目標を持ち、それぞれが効率を上げようとする。これは当然のことです。でも、すべての場所を同じように効率化すれば、会社全体も同じように良くなるとは限りません。
仕事には「流れ」があるからです。
ある場所で仕事を速くしても、その次で処理できなければ、そこで仕事は滞ります。逆に、全体の流れを止めている場所が改善されれば、そこだけの改善でも会社全体の仕事が大きく進むことがあります。
大切なのは、
「どこが一番忙しいか」ではなく、「どこが全体の流れを決めているか」。
会社の一部分だけではなく、全体の成果から考える。こうした見方を、「全体最適」と呼びます。 そして、全体の流れを制約している場所が、「ボトルネック」です。
生産性を、「会社全体」から考えてみる。
社員が手を休めていない。機械が止まっていない。たくさんの仕事を処理している。それだけを見れば、効率の良い会社に見えます。
でも、会社の目的は、全員を常に忙しくすることではありません。仕事をきちんと前へ進め、最終的な成果につなげることです。生産性を上げようとすると、私たちはつい、一人ひとり、一つひとつの部署の効率を上げようとします。
でも、部分最適の積み重ねが、必ずしも全体最適になるとは限りません。
だから、「もっと効率を上げよう」と考える前に、「会社全体の仕事は、どこで止まっているのだろう。」と考えてみる。そこにボトルネックがあるなら、まず見るべきなのはそこかもしれません。
忙しさを見るのではなく、仕事全体の流れを見る。それだけでも、「生産性」という言葉の見え方は少し変わってきます。
POINT
一人ひとりが忙しく働き、それぞれの工程の効率が高くても、会社全体の成果が高くなるとは限りません。組織全体の成果は、仕事の流れの中で最も大きな制約となっている部分、つまりボトルネックによって左右されることがあります。
そのため、個々の工程をそれぞれ最適化する部分最適ではなく、仕事の流れ全体を見て成果を高める全体最適という視点が重要になります。こうした考え方を体系的に捉える理論の一つが、**制約理論(TOC:Theory of Constraints)**です。TOCでは、組織の成果を制約している要因に着目し、その制約を中心に全体を改善していきます。
「みんなが忙しいか」ではなく、**「会社全体の成果につながるところに力を使えているか」**を見ることが重要です。
→ 「制約理論(TOC)」とは