仕事の会話は、ずいぶん効率的になった。
会議には、議題がある。メールには、宛先がある。チャットには、用件がある。必要な人に、必要な情報を、すぐに伝えられる。
仕事のコミュニケーションは、ずいぶん便利になりました。でも、その一方で、「そういえばさ。」 から始まる会話は、減っていないでしょうか。
「用事のない会話」は、本当に無駄なのか。
仕事中の雑談は、一見すると生産性とは関係がないように見えます。
天気の話。週末の話。最近あった出来事。仕事とは関係のない話をしていたはずなのに、いつの間にか、「そういえば、あの案件どうなった?」「実は、ちょっと困っていて。」と仕事の話になることがあります。そこから、本人がまだ相談するほどではないと思っていた問題が見つかることもある。
別の部署が持っていた情報とつながることもある。何気なく話したアイデアを、誰かが面白がってくれることもある。最初から目的が決まっていないからこそ、生まれるものがある。 雑談には、そんな側面があります。
効率化すると、「偶然」も減っていく。
会議なら、参加する人が決まっています。メールなら、送る相手が決まっています。チャットなら、話すテーマがある程度決まっています。これは仕事を進めるうえでは、とても合理的です。
一方で、たまたま隣にいた人と話す。別の部署の話が耳に入る。何気なく聞いた一言から、自分の仕事とのつながりに気づく。そんな「予定されていなかった情報との出会い」は起こりにくくなります。
無駄をなくすことは大切です。でも、無駄に見えるものをすべてなくしていくと、偶然から生まれる気づきまでなくしてしまうかもしれません。
雑談を増やせばいい、という話ではない。
だからといって、「もっと社員同士で雑談をしましょう。」と決めればいいわけでもありません。「毎日15分、雑談してください。」と言われた瞬間、それはもう「用事のない会話」ではなくなってしまいます。
大切なのは、雑談を管理することではなく、用事がなくても話せる余白が、会社の中にあること。
忙しすぎて、誰にも声をかけられない。話しかけると邪魔をしているように感じる。必要なこと以外はチャットに書かない。 そんな空気になっていないでしょうか。
会社には、「余白」も必要なのかもしれない。
効率のよい会社をつくる。無駄な会議を減らす。情報共有を速くする。どれも大切なことです。でも、人と人とのコミュニケーションまで、すべて効率だけで考える必要はないのかもしれません。
相談になる前の違和感。まだ形になっていないアイデア。誰に伝えればいいのかも分からない情報。そうしたものは、用件として整理される前の会話から出てくることがあります。
会議には議題がある。メールには宛先がある。チャットには用件がある。では、あなたの会社では、「そういえばさ。」から始まる会話は、どこで生まれていますか。
POINT
この記事のテーマは、経営学では「インフォーマル・コミュニケーション」につながる考え方です。
組織のコミュニケーションは、会議や報告などの公式なルートだけで行われているわけではありません。何気ない会話や非公式な人間関係も、情報の共有や新しい気づきに影響します。