「お客様に喜んでもらうことが、一番です。」
ある会社で、社員がお客様への思いを話していました。
「お客様には、満足して帰ってもらいたいんです。」
そう話す社員の表情は、無表情でした。
接客が悪いわけではありません。
言葉遣いも丁寧です。
決められたことも、きちんとやっている。
でも、その言葉はどこか、マニュアルを読んでいるようにも聞こえます。お客様を満足させようとしている社員自身は、満足しているのだろうか。
顧客満足をつくっているのは、誰だろう。
会社は、さまざまな方法で顧客満足を高めようとします。
接客マニュアルを整える。
研修をする。
アンケートを取る。
サービスを改善する。
もちろん、どれも大切です。
けれど、実際にお客様と接しているのは、その会社で働く人です。
お客様の話を聞く。
困っていることに気づく。
その場で考える。
ときには、マニュアルにはない対応をする。
会社がどれだけ「お客様第一」を掲げても、それをお客様に届けるのは、そこで働く人です。
会社とお客様の関係は、働く人を通してつくられている。
だとすれば、顧客満足だけを見ていていいのでしょうか。
「笑顔で接客してください」で、笑顔になれるか。
「もっと笑顔で接客しよう」そう言うことはできます。
研修で接客方法を教えることもできます。
マニュアルに「笑顔で対応する」と書くこともできます。
でも、働く人が自分の仕事に手応えを感じられず、困ったときに支援もなく、自分の意見も聞いてもらえない。そんな状態で、「お客様のために、もっと笑顔で」と言われたら、どうでしょう。
反対に、
自分の仕事に意味を感じている。
困ったときには周囲から支援してもらえる。
自分の意見を聞いてもらえる。
自分で考えて、お客様に対応できる。
そんな状態なら、お客様との向き合い方にも違いが生まれるかもしれません。
もちろん、
社員が満足すれば、自動的にお客様も満足する。
そんな単純な話ではありません。 ただ、お客様に提供されるサービスと、それを提供する人の状態を、別々に考えることもできないはずです。
顧客満足は、働く人から始まる。
お客様が受け取るサービスは、お客様と接するその瞬間だけにつくられるものではありません。その前には、そこで働く人の仕事があります。
働く環境がある。
上司や仲間との関係がある。
仕事への手応えや、会社からの支援もある。
そうした会社の中での経験が、働く人を通して、お客様へのサービスにつながっていきます。
だから、
「どうすれば、お客様にもっと満足してもらえるか」
と考えるとき、お客様だけを見ていては見えないものがあります。
お客様を大切にしたいなら、そのお客様と向き合っている人を大切にできているか。
顧客満足と従業員満足は、別々の経営課題ではありません。
会社の中で働く人の状態と、お客様が受け取るサービス。その二つは、つながっています。
「お客様に満足してほしいんです。」
そう話す社員は、笑っているか。顧客満足を考えるとき、その表情もまた、会社が見るべきものなのかもしれません。
POINT
この記事のテーマは、「サービス・プロフィット・チェーン」につながる考え方です。
サービス・プロフィット・チェーンは、従業員が働く環境や従業員満足と、顧客に提供されるサービス価値、顧客満足やロイヤルティ、そして企業の成長や収益性とのつながりを捉える考え方です。
顧客満足を顧客との接点だけで考えるのではなく、その価値を生み出す従業員や組織の状態から捉える視点を与えてくれます。