従業員、顧客、企業の成果は、
どうつながっているのか。
企業の成長や利益は、どこから生まれるのでしょうか。
商品やサービスが売れる。
顧客が繰り返し利用する。
新しい顧客が増える。
その背景には、顧客が商品やサービスに価値を感じ、満足するという経験があります。
では、その顧客に価値を提供しているのは誰でしょうか。
多くの場合、その役割を担っているのは、そこで働く従業員です。そして、従業員がどのような環境で働き、どのような支援を受けているかは、顧客に提供されるサービスにも関わってきます。
従業員、顧客、そして企業の成果。 一見すると別々に見えるこれらの関係を、一つの連鎖として捉えた考え方が、サービス・プロフィット・チェーン(Service-Profit Chain)です。
サービス・プロフィット・チェーン
とは何か
サービス・プロフィット・チェーンは、James L. Heskett、W. Earl Sasser Jr.、Leonard A. Schlesingerらによって示された、組織内部の状態から顧客への価値提供を経て、企業の成長や収益性へとつながる関係を捉えたモデルです。
基本的な流れは、次のように整理できます。
社内サービス品質
↓
従業員満足
↓
従業員定着・生産性
↓
サービス価値
↓
顧客満足
↓
顧客ロイヤルティ
↓
売上成長・収益性
このモデルの特徴は、企業の利益だけを単独で捉えないことにあります。
企業の成果の手前には、顧客との関係がある。
その手前には、顧客が受け取る価値がある。
さらにその手前には、価値を提供する従業員と、その従業員を支える組織があります。
サービス・プロフィット・チェーンは、こうした一連の関係を「チェーン=連鎖」として捉えます。

出発点は
「社内サービス品質」
サービス・プロフィット・チェーンの出発点にあるのが、社内サービス品質(Internal Service Quality)です。
これは単に、福利厚生を充実させたり、従業員を厚遇したりするという意味ではありません。従業員が仕事をするための環境や仕組み、必要な支援など、従業員が顧客に価値を提供するための組織内部の条件を指します。
たとえば、適切な人材配置、仕事を支える仕組みやツール、教育や支援、権限などです。従業員が能力を発揮できる環境が整っているか。サービス・プロフィット・チェーンは、顧客に提供されるサービスを考えるとき、その出発点を組織の内部に置いています。
社内サービス品質から、
従業員満足へ
仕事をするための環境や支援が整っていれば、従業員は自分の仕事に取り組みやすくなります。
必要な情報や道具がある。
能力を発揮できる。
顧客のために必要な判断ができる。
仕事を進めるための支援を受けられる。
こうした職場の状態は、従業員満足(Employee Satisfaction)につながります。
ただし、「従業員を満足させれば、利益が増える」という単純な考え方ではありません。
重要なのは、従業員満足だけを見るのではなく、その先にある従業員の定着や生産性、さらに顧客への価値提供までを一つのつながりとして見ることです。
従業員の定着と生産性
サービス・プロフィット・チェーンでは、従業員満足は、従業員の定着(Employee Retention)や生産性(Employee Productivity)につながる要素として位置づけられています。
従業員が定着すれば、仕事を通じて蓄積された経験や知識が組織に残りやすくなります。一方、従業員が頻繁に入れ替われば、そのたびに採用や教育が必要となり、蓄積された経験が失われることもあります。
従業員が能力を発揮し、生産性を高めることができるか。それは、その先にある顧客への価値提供にも関わってきます。
従業員から、顧客への
「サービス価値」へ
ここで、組織内部の状態が顧客へとつながります。
従業員が能力を発揮し、商品やサービスを提供する。その結果として顧客が受け取るものが、サービス価値(External Service Value)です。
顧客が感じる価値は、商品そのものだけで決まるわけではありません。サービスの品質、対応の速さ、使いやすさ、顧客の問題をどれだけ解決できるか。さらに、支払う価格や、利用するために必要な時間や労力なども関係します。
顧客は、こうしたものを含めて、その商品やサービスにどれだけの価値があるかを判断します。つまり、組織内部の環境や仕組みは、従業員の仕事を通じて、顧客が受け取る価値へとつながっていきます。
サービス価値から、
顧客満足へ
顧客が受け取ったサービス価値は、顧客満足(Customer Satisfaction)につながります。
企業がどれほど「良いサービスを提供した」と考えていても、顧客が同じように評価するとは限りません。実際にどのようなサービスを受け取り、それをどう評価するか。そこには顧客自身の判断があります。
サービス・プロフィット・チェーンでは、企業内部の活動がそのまま企業の利益につながるのではなく、顧客に提供される価値と、その価値に対する顧客の評価を介して、次の段階へとつながっていきます。
顧客満足から、
顧客ロイヤルティへ
顧客満足の先に位置づけられているのが、顧客ロイヤルティ(Customer Loyalty)です。
ここでいう顧客ロイヤルティとは、顧客がその企業の商品やサービスを継続して利用したり、再び選んだりする関係を指します。
顧客が満足したからといって、必ず次も同じ企業を選ぶとは限りません。そのためサービス・プロフィット・チェーンでは、顧客満足だけでなく、その満足が継続的な利用や関係につながっているかまでを捉えます。
顧客ロイヤルティから、
成長と収益性へ
顧客との関係が継続すれば、再購入や継続利用につながります。そうした顧客との関係が、企業の売上成長や収益性を支えることになります。ここまでの流れを改めて見ると、
社内サービス品質
↓
従業員満足
↓
従業員定着・生産性
↓
サービス価値
↓
顧客満足
↓
顧客ロイヤルティ
↓
売上成長・収益性
という連鎖になります。
利益は、このチェーンの最後に位置しています。
サービス・プロフィット・チェーンでは、利益という結果だけを見るのではなく、その結果が生まれるまでに何がつながっているのかを見ていきます。
「従業員満足を高めれば、
利益が増える」という
単純な話ではない
サービス・プロフィット・チェーンは、
従業員満足
↓
顧客満足
↓
利益
という単純な関係として理解されることがあります。
しかし、実際のモデルは、その間にあるいくつものつながりを示しています。従業員満足と顧客満足の間には、従業員の定着や生産性、顧客に提供されるサービス価値があります。顧客満足と企業の成果の間には、顧客ロイヤルティがあります。
つまり、一つの要素だけを高めれば、必ず次の成果が生まれると考えるのではなく、それぞれの要素がどのようにつながっているのかを見ることが重要です。
従業員満足は高いのに、顧客への価値提供につながっていない。
顧客満足は高いのに、継続利用につながっていない。
顧客との関係は続いているのに、十分な収益につながっていない。
そうした場合には、チェーンのどこでつながりが弱くなっているのかを考える必要があります。
サービス・プロフィット・チェーンの重要な点は、個々の要素だけではなく、それらの間にある「つながり」に目を向けることにあります。
企業の成果を、
「つながり」から考える
企業の成長や収益性は、企業活動の重要な成果です。
しかし、その数字だけを見ても、なぜその成果が生まれたのかまでは分かりません。
顧客との関係を見る。
顧客が受け取っている価値を見る。
その価値を提供している従業員を見る。
さらに、従業員が働いている組織内部の環境を見る。
サービス・プロフィット・チェーンは、従業員満足、顧客満足、顧客ロイヤルティ、企業の成果を、それぞれ独立したものとして捉えません。
従業員を支える組織から、顧客への価値提供へ。
顧客の満足から、顧客との継続的な関係へ。
そして、その関係から企業の成長や収益性へ。
企業の成果だけを見るのではなく、その成果が生まれるまでの「つながり」を見る。それが、サービス・プロフィット・チェーンの基本的な考え方です。
参考文献
- Heskett, J. L., Jones, T. O., Loveman, G. W., Sasser, W. E. Jr., & Schlesinger, L. A. (1994). “Putting the Service-Profit Chain to Work.” Harvard Business Review, 72(2), 164–174.
- Heskett, J. L., Sasser, W. E. Jr., & Schlesinger, L. A. (1997). The Service Profit Chain: How Leading Companies Link Profit and Growth to Loyalty, Satisfaction, and Value. Free Press.