なぜ、社員は失敗を隠したのか。

2026.10.10
改善する

「なぜ、すぐに報告しなかったんだ。」

社員が失敗を隠していた。
そんな経験はありませんか。

小さなミスだった。
すぐに報告していれば、大きな問題にはならなかったかもしれない。
ところが、報告が遅れたことで、問題はさらに大きくなってしまった。

「なぜ、すぐに報告しなかったんだ。」
上司がそう叱るのも無理はありません。
でも、少し考えてみたいのです。

なぜ、その社員は失敗を隠したのでしょうか。

失敗を報告できる会社か。

失敗を報告すると、厳しく叱られる。
評価が下がる。
周囲から責められる。
そんな経験を重ねていたら、どうでしょう。

「できれば知られたくない」
「自分で何とかできないだろうか」
そう考える社員がいても、不思議ではありません。
もちろん、失敗を隠すことが許されるわけではありません。

しかし、「失敗はすぐに報告しろ」と言うだけで、本当に報告されるようになるのでしょうか。
失敗を報告しない社員の問題と、失敗を報告しにくい会社の問題。
その両方を考える必要があります。

なぜなら、失敗が報告されなければ、会社は問題が起きていることさえ分からないからです。

「次から気をつけろ」で、会社は変わるのか。

例えば、ある社員が発注数量を間違えてしまったとします。
幸い、大きな損失にはならなかった。
上司は原因を確認し、本人に注意します。
「次から気をつけます。」
これで一件落着。
でも、もし別の社員が同じ仕事をしたら、どうでしょう。

発注数量の判断基準が曖昧だったのかもしれない。
確認する手順に問題があったのかもしれない。
あるいは、誰もが同じ間違いをする可能性があったのかもしれません。

本人は、失敗から何かを学んだでしょう。
しかし、その経験が本人の中にとどまっていたら、別の社員が同じ失敗を繰り返すかもしれません。
一人の反省で終わらせるのか。会社全体の学びに変えるのか。 同じ失敗でも、その後の会社の対応によって、残るものは違ってきます。

失敗を、会社の財産にできるか。

失敗をなくすことは、大切です。
しかし、すべての失敗をなくすことは難しいでしょう。
だからこそ、起きてしまった失敗を、次の仕事にどう生かすかが問われます。

なぜ、その判断をしたのか。
どこに問題があったのか。
ほかの仕事にも、同じ問題はないだろうか。

失敗した社員の経験を、ほかの社員と共有する。
原因や判断を言葉にする。
そこで得られた知識を、別の仕事にも結びつけてみる。
そして、実際の仕事の中で生かしていく。

一人の失敗から、別の誰かが学ぶ。
ある部署の経験が、別の部署の仕事を変える。
そうした積み重ねによって、個人の経験は組織の知識になっていきます。
失敗を隠さないことは、ゴールではありません。

失敗から得られた経験を、組織の知識へ変えていくこと。
「なぜ、社員は失敗を隠したのか。」
その問いの先には、もう一つの問いがあるのかもしれません。
あなたの会社は、失敗から何を学んでいますか。


POINT

この記事のテーマは、経営学では「SECIモデル」につながります。

SECIモデルは、個人の持つ経験や知識が、他者との共有や言語化、知識の組み合わせ、実践を通じて、組織の知識へと発展していくプロセスを捉える理論です。失敗の経験も、本人の中にとどまっているだけでは、組織全体の知識にはなりません。

経験を共有し、原因や判断を言葉にし、ほかの知識と結びつけ、次の仕事に生かしていく。そうした知識創造の視点から、失敗を組織の学びにつなげることを考えられます。

→ 「SECIモデル」とは

→ 「心理的安全性」とは何か

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