ECRSとは何か

2026.10.01
理論から学ぶ

仕事を「なくせないか」
から考える改善の4原則

仕事を改善しようとするとき、私たちはつい、
「もっと早くできないか」
「もっと簡単にできないか」
と考えます。

作業時間を短くする。
手順を簡単にする。
新しいシステムを導入する。

もちろん、それも改善です。
しかし、その前に考えることがあります。

そもそも、その仕事は必要なのでしょうか。

必要のない仕事をどれだけ早くしても、その仕事は残り続けます。仕事のやり方を工夫する前に、まず仕事そのものを見直す。そのための代表的な改善の考え方が、ECRS(イクルス)です。

ECRSとは何か

ECRSとは、業務や工程を改善するときに使われる4つの着眼点です。

E:Eliminate ―― 排除
なくせないか。

C:Combine ―― 結合
一緒にできないか。

R:Rearrange ―― 交換・順序変更
順番や配置を変えられないか。

S:Simplify ―― 簡素化
もっと簡単にできないか。

ECRSでは一般に、E → C → R → Sの順に改善を検討することが基本とされます。

重要なのは、4つの言葉を覚えることだけではありません。
なぜ「なくせないか」から考えるのか。
そこにECRSの重要な考え方があります。

E:Eliminate
― なくせないか

最初に考えるのは、
「その仕事を、なくせないか」
です。

その作業は、本当に必要なのか。
その書類は、本当に必要なのか。
その確認は、なぜ行っているのか。
その会議は、何のために開いているのか。

たとえば、毎日10分かかる報告書の作成業務があるとします。入力方法を改善して8分にできれば、2分の短縮です。しかし、その報告書自体がすでに必要ないのであれば、仕事をなくすことで10分を0分にできます。

だからECRSでは、仕事のやり方を変える前に、仕事そのものの必要性を問い直します。

C:Combine
― 一緒にできないか

なくすことができないのであれば、次に、
「一緒にできないか」
を考えます。

別々に行っている作業をまとめる。
似た内容の会議を一つにする。
複数の帳票を一つにする。
別々の確認を同時に行う。

仕事が細かく分かれていると、その間に受け渡しや待ち時間、重複した作業が生まれることがあります。

Combineでは、分かれている仕事を組み合わせることで、余分な手間を減らせないかを考えます。

R:Rearrange
― 順番や配置を変えられないか

次に考えるのが、
「順番や配置を変えられないか」
です。

作業の順序を変える。
担当者を変える。
作業する場所を変える。
実施するタイミングを変える。

仕事そのものをなくしたり、まとめたりできなくても、順番や配置を変えることで、移動や待ち時間、手戻りを減らせることがあります。

Rearrangeでは、現在の流れを当然のものとせず、仕事の流れそのものを組み替えられないかを考えます。

S:Simplify
― もっと簡単にできないか

最後に考えるのが、
「もっと簡単にできないか」
です。

手順を減らす。
入力項目を減らす。
書式を統一する。
作業を標準化する。
システムで自動化する。

E、C、Rを検討したうえで、それでも残る必要な仕事を、より少ない手間で行えるようにします。

ここで重要なのは、Simplifyが最後にあることです。 最初から「どうすれば簡単にできるか」だけを考えると、本来なくせる仕事を、効率よく続けることになりかねません。

なぜ、
E→C→R→Sの順なのか

ECRSは、

E 仕事そのものをなくす
↓
C 仕事をまとめる
↓
R 仕事の流れを組み替える
↓
S 残った仕事を簡単にする

という順に改善の可能性を考えます。

この順番には、改善効果の大きなところから考えるという意味があります。今ある仕事を前提にして効率化するのではなく、まず、その仕事そのものを疑う。

それでも必要なら、まとめる。流れを変える。
そして最後に、簡単にする。 ECRSは、仕事のやり方だけでなく、仕事そのものを見るための改善の視点です。

ECRSは、さまざまな
仕事に使える

ECRSは、工程改善や作業改善で使われる考え方ですが、その視点は製造現場だけに限られません。

会議。
報告書。
申請や承認。
データ入力。
顧客対応。
情報共有。

さまざまな仕事について、

なくせないか。
一緒にできないか。
変えられないか。
簡単にできないか。

と問い直すことができます。また、一度改善した仕事であっても、環境や技術が変われば、再び見直すことができます。このように改善を繰り返していく考え方は、継続的改善にもつながっていきます。

仕事を早くする前に、
仕事そのものを見る

目の前の仕事をもっと早くする。
もっと効率よくする。
それも改善です。

しかし、仕事のやり方だけを見ていると、必要のない仕事を、一生懸命に効率化してしまうことがあります。
どうすれば、この仕事をもっと早くできるか。

その前に、
そもそも、この仕事は必要なのか。
そこから改善を考え始める。
それが、ECRSの基本的な考え方です。


参考文献

  • Kanawaty, G. (ed.) (1992). Introduction to Work Study. 4th revised ed., International Labour Office.
  • Barnes, R. M. (1980). Motion and Time Study: Design and Measurement of Work. 7th ed., John Wiley & Sons.
  • Salvendy, G. 編、日本能率協会IEハンドブック翻訳委員会 訳(1986)『IEハンドブック』日本能率協会。
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