「今年の目標は、自分で決めてください。」
自分で決めた目標なら、自分ごとになる。自分ごとになれば、主体的に取り組んでくれる。
そう考えて、社員一人ひとりに目標を決めてもらう。
「今年は何を目指しますか」
「どこまで成長したいですか」
「自分で目標を考えてみてください」
ところが、出てきた目標を見てみると、
無理なく達成できそうな数字。
昨年とあまり変わらない内容。
上司が期待していそうな目標。
そして期末になると、
「そういえば、そんな目標を書いたな」
となっている。
自分で決めた目標なら、本当に人は頑張れるのでしょうか。
大切なのは、「誰が決めたか」なのか。
目標には、いろいろな決め方があります。
会社が決める。
上司と相談して決める。
本人が自分で決める。
自分で決めることには、もちろん意味があります。でも、本人が決めたというだけで、その目標に本気で取り組むとは限りません。反対に、会社や上司から示された目標でも、
「なぜ、この目標なのか」
「自分に何を期待されているのか」
「達成することに、どんな意味があるのか」
それを理解し、本人が「やってみよう」と思えているなら、その目標に向かって動くことはあります。
目標を自分で決めることと、その目標を自分のものとして引き受けることは、同じではない。
大切なのは、「誰が決めたか」だけではないのかもしれません。
納得していない目標は、ただの数字になる。
「売上を前年比110%にする」
「新規顧客を10社獲得する」
「業務時間を20%削減する」
数字としては、明確な目標です。
でも、
「なぜ110%なのか」
「なぜ自分が10社なのか」
「なぜ20%削減する必要があるのか」
本人がそこに意味を見いだせなければ、目標は会社から渡された数字のままです。
一方で、自分で決めた目標でなくても、
「この目標を達成したい」
「ここまではやってみたい」
と本人が受け入れることができれば、目標との関わり方は変わります。 必要なのは、目標を「自分でつくらせること」ではなく、「自分のものにすること」なのかもしれません。
目標は、決めた瞬間にはまだ始まっていない。
目標管理というと、どうしても「どんな目標を設定するか」に目が向きます。
具体的な数字を決める。
期限を決める。
本人に目標を書かせる。
でも、目標を書いたことと、その目標に向かって動き始めることの間には、距離があります。会社や上司にできるのは、社員の代わりに目標を達成することではありません。
だからといって、
「自分で決めたんだから、頑張って」
で終わることでもない。
なぜ、この目標なのか。
何を期待しているのか。
本人は、それをどう受け止めているのか。
そこまで話して初めて、会社の目標と本人の目標が重なることがあります。
「自分で決めた目標だから、頑張れる」のではなく、「自分が目指す目標だと思えるから、頑張れる」。
目標を決めることより、その目標に本人が納得し、向き合える状態をつくること。
それも、人を育てる仕事の一つなのかもしれません。
POINT
この記事のテーマは、「目標設定理論」につながる考え方です。
目標設定理論では、目標が人の行動や成果にどのような影響を与えるかを考えます。具体的で挑戦的な目標であることに加えて、その目標を本人が受け入れ、達成しようとする目標へのコミットメントも重要になります。
目標を本人に決めさせること自体が目的なのではなく、その目標を本人がどう受け止め、どれだけ自分の目標として取り組めるかを考える視点につながります。