経営者は、なぜ考えを言葉にしなければならないのか。

2026.08.15
育てる

「何度言っても伝わらない。」

経営者から、よく聞く言葉です。

「朝礼でも話している。」「会議でも伝えている。」「経営理念も掲げている。」

それでも、社員の行動は思うように変わらない。

そんな経験はないでしょうか。

しかし、本当に伝わっていないのでしょうか。

もしかすると、社員ではなく、経営者自身が「伝えたいこと」を、まだ言葉にできていないのかもしれません。

同じことを話しているつもりでも、毎回少し違う。

経営者は毎日、会社のことを考えています。

「こんな会社にしたい。」「お客様にはこう接してほしい。」「社員にはこう育ってほしい。」

頭の中には、さまざまな思いや経験があります。

ところが、それを改めて言葉にしようとすると、意外と難しいものです。

昨日と今日で少し表現が違う。会議と朝礼で話す内容が少し違う。

本人は同じことを伝えているつもりでも、社員には違うメッセージとして受け取られてしまいます。

伝わらない原因は、社員にあるとは限りません。経営者自身の考えが、まだ整理されていないことも少なくないのです。

「お客様第一」だけでは、判断できない。

 多くの会社には社訓や経営理念があります。

例えば、

お客様第一

という言葉。

もちろん間違いではありません。

しかし、この言葉だけで社員は判断できるでしょうか。

値引きを優先することなのか。無理な納期でも引き受けることなのか。クレームはすべて受け入れることなのか。

人によって答えは変わります。

つまり、言葉はあるけれど、判断基準になっていないのです。

例えば、

私たちは、お客様が「またお願いしたい」と思える仕事をする。

あるいは、

迷ったら、お客様との長い信頼につながる判断を選ぶ。

こう表現すると、社員は「何を大切にして判断すればよいのか」が見えてきます。

会社によって言葉は違って構いません。

大切なのは、その会社らしい判断基準が言葉になっていることです。

経営者の仕事は、会社の判断基準を言葉にすること。

社員は毎日、小さな判断を積み重ねています。

電話対応、品質、納期、提案、クレーム対応──そのすべてを経営者が判断することはできません。

だからこそ必要なのが、**「迷ったときに立ち返る言葉」**です。

経営者が本当に伝えるべきなのは答えではありません。

社員一人ひとりが、自ら考え、判断するための基準です。

その基準が共有されて初めて、会社は同じ方向を向いて進み始めます。

あなたの会社には、「判断基準」がありますか。

経営理念があることと、社員が同じ判断をできることは違います。

一度、自社の理念や社訓を見直してみてください。

そして、自分自身に問いかけてみてください。

「社員が迷ったとき、立ち返ることのできる一文があるだろうか。」

もし、その一文がまだないのなら、まずは会社として本当に大切にしたいことを書き出してみてください。

それは一年後の目標かもしれません。

あるいは、五年後も変わらない会社の価値観かもしれません。

経営者の考えが言葉になったとき、その言葉は社員にとっての判断基準となり、やがて会社の文化になっていきます。


POINT

この記事のテーマは、**「SECIモデル」**につながる考え方です。

経営者が経験の中で培ってきた考えや判断基準には、本人には分かっていても、言葉にしなければ他の人には共有しにくいものがあります。

そうした個人の中にある知を言葉や概念として表し、組織で共有できる知へ変えていく。この知識創造のプロセスを考える視点の一つが、SECIモデルです。

→ 「SECIモデル」とは

 

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